二つ以上の旧字をもつ漢字

手もとの辞典(『新字源 改訂版』、角川書店、第24版、1997)で「新字が二つ以上の旧字の音・義をあわせもっている」とされる字。

新字馬酔木明朝旧字意味補足
  1. あたえる(あたふ)。
  2. ゆるす。=与
  3. われ。自称の代名詞。=余
  1. あらかじめ。あらかじめする。まえもって。まえもって備える。=預
  2. 気がはれる。よろこぶ。あそびたのしむ。=じょ
  3. の九州の一つ。河南省と山東・湖北両省の一部にあたる。
  4. えきの六十四の一つ。䷏。心のなごやかなさまにかたどる。
シャ
州の学校。=しゃ・序
テイ タイ
  1. からだ。「肉體」
  2. てあし。「四體」
  3. かたち。すがた。ありさま。「形體」
  4. かた。きまり。「政體」
  5. もの(物)。ある形をもったもの。「物體」
  6. もちまえ。本性。ものの本体。おおもと。↔用
  7. みにつける。理解して自己のものとする。
[体]俗に體の略字として誤用されていた。教育漢字はこれによる。
テイ タイ
體に同じ。
ホン
  1. あらい。そまつな。=ほん
  2. おとる(劣)。
われ。自分。
教育漢字は、俗に余を餘の略字として用いたものによる。
  1. ゆたか。
  2. あまり。
    1. のこり。「残餘」
    2. なごり。
    3. 余分。
    4. はした。
    5. のち。すえ。
    6. ひま。「餘暇」
    7. ほか。「餘人」
  3. あまる。あます。のこる。
タイ ダイ
  1. 上に物をのせてささえる道具。
  2. 人がすわる、また、寄りかかる臺。「講臺」
  3. うてな。ものみやぐら。見晴らしのよい高い建物。「楼臺」
  4. 高く平らかな地。「臺地」
  5. 中央政府の役所の異称。また、高官の異称。「制臺」
  6. 敬語として用いる。「貴臺」
  7. しもべ。=たい
  8. すげ。=たい

教育漢字は、俗に台を臺の略字として用いていたものによる。

国訓 もとの。「臺紙」「臺帳」

  1. よろこぶ。=怡
  2. われ。わが。
  3. 如台いかん」は、如何いかんに同じ。
タイ
  1. 星の名。「三公」の意。上・中・下三星あり、三公の象徴とされる。「登台」
  2. 敬語として用いる。「台安」
ベン
  1. かんむり
  2. 下級の武士。「武弁」
  3. うつ(打)。たたく。=べん
  4. いそぐ。
バン
たのしい。=般

教育漢字では、辨・瓣・辯の意に用いる。

国訓 べん

  1. 辨官の略。
  2. 独特の話しぶり。または、方言。「関西辯」

ベン
  1. ける(わく)。わかつ。
    1. 切って分ける。=判
    2. 区別する。
  2. わきまえる(わきまふ)。分別する。明らかにする。おさめる(理)。
  3. そなえる。(具)
  4. かわる。=変
  5. かえす。「辨償」=返
ヘン
おとしめる。=へん
あまねし。=へん
ベン
  1. うりのなかご。うりの中身。
  2. 果肉の一片。
  3. はなびら。「花瓣」=片
  4. 機械の液体・気体などの出入りを調節する部品。「安全瓣」
ベン
  1. ける(わく)。
    1. 区別して明らかにする。
    2. おさめる(理)。
  2. 道理を説きあかす。
  3. あらそう(あらそふ)。いいあらそう。
  4. いさめる。
  5. 言論にひいでている。
  6. 口だっしゃ。巧言。
  7. つかう。
  8. 文体の一つ。論文。
ヘン
あまねし。=徧
タン
  1. になう(になふ)。
    1. かつぐ。おう(負)。=儋
    2. ひきうける。
  2. たすける。味方する。
  3. あげる(挙)。
  1. にもつ。=たん
  2. 重量の単位。百斤。
  3. 容積の単位。一石。

[擔]たんの異体字。

[担]俗に、擔の略字として用いられている。教育漢字はこれによる。

国訓 かつぐ。

  1. だます。
  2. 迷信などを信じる。

タン
  1. うつ(撃)。=たん
  2. はらう(払)。
ケツ
高く上げる。あがる。=けつ・掲
ケン ケツ慣
  1. あくび。あくびをする。
  2. すくない。たりない。=歉
  3. かける。
[缺]古くから、俗に誤って欠と混用されていた。教育漢字はこれによる。
ケツ
  1. ける(かく)。=闕
    1. こわれる。
    2. たりない。「補缺」
    3. 不完全な。「残缺」↔完
  2. きず。かけきず。「缺点」=闕
  3. すき。すきま。=闕
  4. 官職の空位。=闕
ヒン
  1. はま。きし。なみうちぎわ。
  2. はて。かぎり。
  3. そう(沿)。土地が水べにそう。
  4. せまる。=ひん
常用漢字は、俗に浜を濱の意に用いたのによる。
ハウ ヒン
舟を風や波から守るために引き入れるみぞ。
テイ チン チャウ
。はげしい火。烈火。
トウ
燈に同じ。
[灯]俗に燈の意に用いる。教育漢字はこれによる。
トウ
  1. ひともし。火をともす道具。
  2. ともしび。あかり。
  3. 仏の教え。世の中のやみを照らすこと。「法燈」
ベキ
  1. いと。いとすじ。細いいと。
  2. かすか(微)。すくない。蚕のはくいとひとすじをこつ、五忽をべきという。
古くから、絲の意に糸を用いることがあった。教育漢字はこれによる。
  1. いと
    1. きぬいと。蚕のはく糸十忽をという。
    2. よりいと。いとの総称。
    3. いとのように細長いもの。「柳絲」
    4. いとを張った楽器。弦楽器。
  2. きぬ。絹糸で織った織物。
  3. わずかな分量。一の一万分の一。
  1. ほとぎ。もたい。水・酒などを入れるかめ。また、しん代には、これを打楽器として用いた。
  2. むかしの容量の名。四こく、また、一斛六斗。

常用漢字は、日本で用いられてきた字形による。

国訓 かん(くわん)。かんに同じ。

  1. 金属、特にブリキ製の入れ物。英語 can の音訳。「罐詰」
  2. かま。「汽罐」
  3. 金属製の湯わかし。「薬罐やかん

クヮン
  1. ほとぎ。
  2. 水をくむ容器。つるべ。
タン ダン
はだぬぎになる。肉体をむき出しにする。「肉胆」=但・たんたん

[胆]たんの別体字。一節に、たんの俗字という。

古くから、膽の俗字として胆が用いられてきた。常用漢字はこれによる。

タン
  1. きもたんのう。胆汁をたくわえておく器官。
  2. きもったま。たましい。決断力。
  3. こころ。「肝膽」
  4. ぬぐう。ふききよめる。
まむし。=

教育漢字は、古くから虫が蟲の略字として用いられていたのによる。

国訓 むし

  1. こどもの病気。かんのむし。
  2. かんしゃく。
  3. むすめの情夫。「むしがつく」
  4. ののしることば。「泣蟲」
  5. 一つのことに熱中する人。「本の蟲」

チュウ
  1. むし。こん虫類の総称。
  2. 動物の総称。
    1. とり。「羽蟲」
    2. けもの。「毛蟲」
    3. かめ。「甲蟲」
    4. さかな。「りんちゅう
    5. 人類。「裸蟲」
  3. →虫虫。
テン
みみず。
教育漢字は、俗に蚕が蠶の略字として用いられていたのによる。
サン
  1. かいこ(かひこ)。さんの幼虫。くわの葉を食べ、まゆをつくる。
  2. かいこを飼う。「蠶業」
ショウ
  1. 明らかにする。あかしをたてる。いつわりがないことをうらづける。
  2. つげる(告)。
  3. うけあう。「保證」
  4. あかし。しるし。=徴
  5. 〘仏〙さとり。「證得」
  6. 病気の状態。=症
  7. 証に同じ。
[証]俗に、借りて證の意に用いる。教育漢字はこれによる。
セイ シャウ
いさめる(諫)。
颱風 擡頭 天台宗 辯護 辨当 辨慶 辨理士